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乳腺疾患
 日本人の乳がんは年々増加傾向にあります。どのがんにもいえることですが、早期発見が最も重要ですので、自覚症状(腫瘤・乳房痛・異常乳汁分泌)のある場合は早めに外科外来を受診されることをお勧めします。非常に早期のがんが乳房超音波検査(エコー)やマンモグラフィ検査で見つかることもあり、乳腺症(後述)のある方など触診でしこりを見つけることが困難な場合もありますので、定期検診を受けられることが大切です。
 乳がん治療の近年の進歩は目覚しく、当院外科でも、常に最新の知見に照らし合わせて患者様の治療を行えるよう心がけております。

【疾患】

1.線維腺腫
20歳代に多い良性腫瘍で、境界がはっきりしておりよく動きます。通常は2~3cm大で成長が止まりますが巨大線維腺腫と呼ばれる著しく大きくなるタイプのものもあります。エコーや穿刺吸引細胞診で確定診断できれば経過観察となります。1/3~2/3ほどは年齢とともに自然に小さくなります。3cmをこえるような大きなものや、増大傾向がある場合は後述する葉状腫瘍の可能性もあるため切除をすすめます。

2.葉状腫瘍
30代の女性に多い良・悪性・中間的な腫瘍で、比較的柔らかく数か月単位で大きくなることが多いです。線維腺腫と検査所見が似ているのですが、肺などに転移をして致命的となるタイプもあり、手術が必要です。手術以外の抗がん剤や放射線療法などはあまり効果がありませんが、きちんと除りきれれば95%の人が治癒します。

3.乳腺症
乳腺疾患の中で最も頻度が高く、30歳代から増加します。乳腺の細胞が、女性ホルモンの影響でアンバランスに変化するため、乳房がゴリゴリと硬く粗く触れ、月経前などに痛みが強いことがしばしばあります。触診だけでは乳癌と紛らわしいことがあるので定期的な画像精査(エコー・マンモグラフィ)を勧めています。病気というよりは、体質的なものであり、治療の必要はありませんが、癌と紛らわしいものがあったり、乳癌リスクが若干上がることもあったりするため定期的な検診をお勧めします。

4.乳癌
40歳代から増加する乳腺の悪性腫瘍です。日本では現在、毎年約4万人が罹患し、女性の癌の第1位となっています。症状は硬い表面不整なしこりを触れ、それを放置すると皮膚に赤みや引き連れを生じたり、潰瘍を形成して出血したりします。また乳頭から血液混じりの分泌液が出ることがあります。乳癌は浸潤癌(癌が乳管内から外側の組織に広がった状態)となると比較的早い時期に全身に広がると考えられています。このため、癌の状態によってホルモン剤、抗癌剤など全身治療を適切に選択する必要があります。乳癌は罹患率は1位ですが、死亡率は5位と「比較的治りやすい」癌であるといえます。ですから、早期発見が特に大切です。

【診断の流れ】

1.視診・触診
典型的な乳癌や線維腺腫のしこりは、指の腹で乳腺を押しなでるようにすると「おまんじゅうの中に梅干の種が入っているように」こりこり触れます。確定診断には精密検査が必要です。※なお近年、検診での視触診は単独で乳癌死亡率の減少にはつながらないとされており、当院でも乳癌検診時の視触診は希望者のみと限定しております。

2.マンモグラフィ
乳腺を専用の装置にはさんで圧迫し、X線写真を撮像します。痛みを伴う検査ですが腫瘤像や石灰化(カルシウム)、ひきつれなどといった変化をとらえることができます。

3.乳房超音波検査(エコー)
乳腺の表面にゼリーを塗って、専用の超音波装置で乳腺全体をくまなく調べます。腫瘤の性質や状態の他、乳腺症の程度をみるのにも有用な検査です。痛みは全くありません。

4.穿刺吸引細胞診
がんを疑う場合や質的診断が困難な場合に行います。エコーを使って目的の部位に細い針を刺し、細胞を採取して顕微鏡で判定します。

5.針生検・外科的生検(組織診)
穿刺吸引細胞診で判定困難な場合や術前に化学療法やホルモン療法を行う可能性がある場合には、局所麻酔をして太めの針を使って組織を切り抜くか、手術室で腫瘤を切除するかして組織学的検査を行い、乳癌のサブタイプを含めた診断を確定します。

6.CT(造影)・MR(造影)I
他の診断法で確定診断がつかないときや、乳がんと診断した場合に病巣の広がり(がんの進展・転移の有無)を判定して治療方針をたてるのに用います。

【乳がんの治療】

1.手術
以前は乳房と胸の筋肉を大きく切除する手術が主流でしたが、近年は筋肉の切除はほとんど行なわないようになりました。さらに、乳房を温存して腫瘍とその周囲のみを切除する乳房温存療法、術前にリンパ節腫大を認めない患者さんに対してリンパ節の切除を最小限にする方法(センチネルリンパ節生検)が広まってきており、当院でもこれらの手術を積極的に取り入れています。また乳房再建を希望される患者様は、当該施設へご紹介させていただいております。

2.ホルモン療法
乳がんは女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)が増殖因子として深く関わっています。針生検や手術で取った腫瘍の組織学的検査の際、必ずホルモン受容体の測定を行っており、抗ホルモン剤が効く場合に投与を行います。副作用が少なく、効果が高い治療法です。主に次のように使い分けています。
閉経前:抗エストロゲン剤(ノルバデックス)
    エストロゲン合成阻害剤(ゾラデックス、リュープリン)
閉経後:抗エストロゲン剤(ノルバデックス、フェアストン、フェソロデックス)
    アロマターゼ阻害剤(アリミデックス、アロマシン、フェマーラ)
※ジェネリック医薬品にも対応しています。

3.化学療法(抗がん剤)
ホルモン療法が効かない場合や、転移を認める進行乳がんなどは、化学療法の適応になります。また、乳房温存療法を目的とした術前化学療法を選択される患者様も増えてきています。当院でも、いずれの治療にも対応しており、常に最新の知見を取り入れるようにしています。

4.分子標的治療(ハーセプチン)
乳がんのうち、HER-2という遺伝子たんぱく質が陽性のタイプでは、これに対する抗体を使用して治療する治療法が開発され、当院でも早くから取り入れています。腫瘍の組織学的検査の際、必ずHER-2測定を行っており、ハーセプチンの投与が必要となったときに迅速に治療に移れるようにしています。


5.放射線療法
乳房温存術後の残った乳腺に対して全部で25~30回、放射線を照射することで残存乳房の再発率を3分の1まで減少させることができます。また乳房全摘をした場合でも腋窩のリンパ節転移が多い場合は適応となることがあります。当院に放射線照射の設備がないため、近隣の病院に依頼をしております。