外科・消化器内科 疾患
対象疾患-乳腺疾患
日本人の乳がんは年々増加傾向にあります。どのがんにもいえることですが、早期発見が最も重要ですので、自覚症状(腫瘤・乳房痛・異常乳汁分泌)のある場合は早めに外科外来を受診されることをお勧めします。そのためには自己検診が重要ですが、非常に早期のがんがエコー(超音波)やマンモグラフィー(レントゲン)で見つかることもあり、また乳腺症(後述)のある方は触診でしこりを見つけることが困難ですので、定期検診を受けられることも大切です。
乳がん治療の近年の進歩は目覚しく、当院外科でも、しこりとその周囲のみを切り取る乳房温存療法・分子標的治療(がん病巣を特異的に攻撃し、副作用が少ない)といった最新の治療法を取り入れています。
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1.線維腺腫
20歳代に多い良性腫瘍で、球状でよく動きます。エコーや穿刺吸引細胞診で確定診断できれば経過観察。3cmをこえるような大きなものや、増大傾向がある場合は切除をすすめます。
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2.乳腺症
乳腺疾患の中で最も頻度が高く、30歳代から増加します。乳腺実質がゴリゴリと硬く粗く触れ、月経前に痛みが強いことがしばしばあります。触診だけでは小さな乳癌と鑑別しがたいので、定期的な精査(エコー・マンモグラフィー)を勧めています。
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3.乳癌
40歳代から増加します。腫瘤は表面不整で、硬く、境界不明瞭な傾向があります。大きくなると、皮膚の発赤を伴ったり、潰瘍形成して出血したりすることもあります。
【診断の流れ】
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1.視診・触診
典型的な乳癌や線維腺腫のしこりは、指の腹で乳腺を押しなでるようにすると「おまんじゅうの中に梅干の種が入っているように」こりこり触れます。指でつまむようにしたときだけ触れるしこりは一般に乳腺症を疑う所見ですが、確定診断には精密検査が必要です。
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2.マンモグラフィー(レントゲン)
乳腺を専用の装置にはさんで圧迫し、X線写真を撮像します。腫瘤像や石灰化(カルシウム)といった変化をとらえることができます。
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3.超音波(エコー)
乳腺の表面にゼリーを塗って、専用の超音波装置で乳腺全体をくまなく調べます。腫瘤像の他、乳腺症の程度をみるのにも有用な検査です。痛みは全くありません。
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4.穿刺吸引細胞診
がんを疑う場合や質的診断が困難な場合に行います。触診下あるいはエコーを使って細い針を刺し、細胞を採取して顕微鏡で判定します。
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5.針生検・外科的生検(組織診)
穿刺吸引細胞診で判定困難な場合などは、局所麻酔をして太めの針を使って組織を切り取るか、手術室で腫瘤を切除して組織学的検査を行い、診断を確定します。
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6.CT・MRI
他の診断法で確定診断がつかないときや、乳がんと診断した場合に病巣の広がり(がんの進展・転移の有無)を判定して治療方針をたてるのに用います。
【乳がんの治療】
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1.手術
以前は乳房と胸の筋肉を大きく切除する手術が主流でしたが、近年は筋肉の切除はほとんど行なわないようになりました。さらに、乳房を温存して腫瘍とその周囲のみを切除する乳房温存療法、術前にリンパ節腫大を認めない患者さんに対してリンパ節の切除を最小限にする方法(センチネルリンパ節生検)が広まってきており、当院でもこれらの手術を積極的に取り入れています。
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2.ホルモン療法
乳がんは女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)が増殖因子として深く関わっています。針生検や手術で取った腫瘍の組織学的検査の際、必ずホルモン受容体の測定を行っており、抗ホルモン剤が効く場合に投与を行います。副作用が少なく、効果が高い治療法です。主に次のように使い分けています。
- 閉経前:抗エストロゲン剤(ノルバデックス)
エストロゲン合成阻害剤(ゾラデックス、リュープリン) - 閉経後:抗エストロゲン剤(ノルバデックス、フェアストン)
アロマターゼ阻害剤(アリミデックス、アロマシン、フェマーラ)
- 閉経前:抗エストロゲン剤(ノルバデックス)
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3.化学療法(抗がん剤)
ホルモン療法が効かない場合や、転移を認める進行乳がんに対しては、化学療法の適応になります。CMF療法・EC療法・タキサンといった点滴療法と、UFT・ゼローダなどの内服治療があります。当院でも、いずれの治療にも対応しており、常に最新の知見を取り入れるようにしています。
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4.分子標的治療(ハーセプチン)
乳がんのうち、HER-2という遺伝子たんぱく質が陽性のタイプでは、これに対する抗体を使用して治療する画期的な治療法が開発され、当院でも早くから取り入れています。腫瘍の組織学的検査の際、必ずHER-2測定を行っており、ハーセプチンの投与が必要となったときに迅速に治療に移れるようにしています。
対象疾患-食道疾患
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1.食道の損傷
食道は食べ物が最初に通過する管ですから、誤って飲み込んだりすることによる損傷が多い臓器です。魚骨や薬のシール(PTP)をそのまま服用して来院する方が多いようです。内視鏡で取り出すか、胃内に押し込みます。
薬物を飲み込んだ場合、アルカリのほうが重症化します。治療はまず絶食で点滴治療になります。
酒を飲んだりして大量に吐いたときに、食道の下端に裂け目が出来て血を吐くマロリーワイス症候群も比較的多い病気です。内視鏡で診断して、治療は絶食と薬物療法です。また、頻回の嘔吐のあとで激烈な胸痛が発生する特発性食道破裂は緊急手術になることがあります。 -
2.アカラジア
食物、特に水分が飲み込みにくくなります。食道下部・噴門部の筋肉が緩まず開かなくなる病気です。治療は、薬物療法、機械的に拡張させる(ブジー)方法が無効の場合、手術が必要になります。
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3.食道裂孔ヘルニア
食道が通っている横隔膜の孔が拡がって、胃が胸のほうに飛び出してくる病気です。下記の食道炎を併発します。薬物療法を行いますが、無効な場合や心臓などを圧迫するときは手術が必要です。
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4.逆流性食道炎(胃・食道逆流症)
胃酸や腸液が逆流して食道に炎症を起こします。薬物療法が有効です。
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5.食道憩室
食道の壁が袋状に外に飛び出た状態です。出血や穴が開いた場合は手術で憩室を切除します。
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6.食道静脈瘤
肝硬変の患者さんに合併する病気です。肝硬変で肝臓に向かう静脈である門脈の圧が高くなるために門脈のバイパスである食道の粘膜下の静脈が膨れて瘤になり、突然大出血(吐血)します。緊急の内視鏡処置が必要です。高次専門病院に転送することもあります。
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7.食道がん
食べ物が通りにくくなったり、つかえる感じがするときは要注意です。進んで内視鏡検査を受けて下さい。早期に見つかれば、内視鏡治療で治りますが、進行した場合は、開胸手術が必要になります。また、放射線化学療法も有効です。
対象疾患-胃・十二指腸疾患
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1.胃炎
急性胃炎:アルコール、ストレス、細菌、などで、急性の炎症が生じます。腹痛、嘔吐など症状は強くでますが、原因を取り除けば、比較的早く直ります。
慢性胃炎:比較的多い疾患で、症状のないことも多いです。最近、胃がんの発生母地として注目されているので、定期的な内視鏡検査をお勧めします。 -
2.胃・十二指腸かいよう(消化性潰瘍)
胃や十二指腸の壁の内側(粘膜側)から欠損が生じる病気。つまり、凹みができるわけです。これが大きく深くなると、出血したり、穴が開いて腹膜炎を起こしたりします。症状は上腹部の痛みや、嘔気などです。
原因はストレスや胃に棲むピロリ菌が主な原因であるといわれています。また、痛み止めの薬、ステロイド剤などを長くのむと潰瘍ができることがあります。
治療は入院などによる安静と食事療法(絶食、禁酒、禁煙)に薬剤(H2ブロッカー、プロトンポンプインヒビター)が良く効きます。
ピロリ菌を退治(除菌)すると、潰瘍の再発を防ぐことができるので、ピロリ菌が原因で潰瘍になった方には除菌をお勧めします。どのようなとき入院や手術をするのか?
- (1)出血があるとき:出血があると、血液を吐いたり(吐血)、あるいは真っ黒い便が出たり(タール便)します。内視鏡でエタノールを注入したり、クリップをかけたりして止血します。どうしても止まらないときは手術をします。
- (2)潰瘍で胃や十二指腸に穴が開いたとき:穿孔穴が開いてすぐなら絶食療法で治療しますが、腹膜炎を起こしていれば、手術になります。
- (3)潰瘍がひきつれて、内腔が狭くなり(狭窄)、食事が入らないとき:これも、手術で直します。
- (4)痛みが強く、食事ができないとき。
- (5)ゆっくり静養したいとき。
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3.胃がん
胃がんは日本人のがん死のなかで肺がんについで第2位のがんです。治ってしまう早期のがんが多いので、患者数は第1位です。初めのうちは、特有の症状はありませんので、人間ドックや検診を受けることが大切です。
上腹部の症状があって来院した方には、胃内視鏡、あるいはバリウムを飲んでレントゲンを撮る検査をお勧めしています。
その他、CT、腹部エコー、病理検査、血液検査などで診断します。
治療は手術でがんを取りきることが大切で、唯一の治る道です。胃を切除し、周囲のリンパ節を一緒にとってきます。これを根治手術といいます。早期~中期の胃がんはこれで治ります。粘膜に限局している早期のがんは手術をすることなく、内視鏡で、がんだけを切り取る治療も出来ます(EMR、ESD)。反対に、進行している胃がんに対しては再発予防のために、手術の後で抗がん剤の投与(化学療法)を行います。また、手術でがんが取りきれないとき、再発した場合は化学療法や免疫療法を行います。
対象疾患-腸疾患・肛門疾患
■腸疾患
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1.急性胃腸炎(含出血性)
毎月相当数の患者様が、嘔気嘔吐・腹痛・下痢を訴え、外来・入院を含めて加療されます。絶食・点滴・痛みのコントロールが治療の基本となります。
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2.潰瘍性大腸炎
最近増加傾向にある炎症性腸疾患です。大腸ファイバーによる診断確定と、急性期の入院加療。その後も、細かで息の長い投薬中心の治療が必要です。
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3.腸結核
昨年度は一例の切除例がありました。呼吸器と連携し予防的追加治療を施行しました。
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4.虚血性大腸炎
成人病の増加と高齢化により、期間一定数の患者様が入院されます。
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5.大腸憩室炎
大腸壁の薄い部分が数ミリにわたり外側に突出する大腸憩室。炎症を起こさなければ全く症状がないこと。急性虫垂炎(いわゆる盲腸)と症状が似ている場合が多いこと。ほとんどの場合、保存的内科治療で軽快するが、まれに手術になること。などの理由で診断確定が重要な疾患です。毎月、腹痛や下血を訴え、患者様が外来・入院加療をされています。
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6.腸閉塞症
何らかの理由で腸の中の内容が先に進まないことで、ガスがでない、おなかが張る・痛む、嘔気嘔吐がある。このような状態が腸閉塞です。手術の癒着によるものが多いのですが、腸炎などさまざまな原因によるものもあり、問診・触診・早期のレントゲン画像診断による正確な病態把握に努め、原因に応じた治療を致します。
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7.急性虫垂炎
触診・エコー・CTなどによる早期の診断確定・手術適応の決定に努めています。
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8.大腸ポリープ
内視鏡によるポリペクトミーを施行しています。大きさ・深達度・ピットパターンなど総合し適応を決定します。現在のスタッフになってからの、術後合併症による緊急開腹症例はありません。近医からの紹介症例も増加しています。
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9.大腸癌
病気によって内視鏡治療(EMR、ESD)から腹腔鏡手術・開腹手術・化学療法まで、大腸がん治療ガイドラインに沿った診断・治療を施行しています。診断確定から手術までの時間を出来るだけ短縮することに努めます。手術適応の決定は安全性を重視し、周術期一ヶ月以内の合併症死亡例はありません。追加補助療法も最新の薬剤をそろえています。
■肛門疾患
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痔核/痔ろう/裂肛
疼痛・出血・脱肛例に対し、投薬を中心とした治療と、定型的症例に対する手術を施行します。
対象疾患-肝臓疾患
肝臓は「沈黙の臓器」などといわれ、血液検査がきっかけで病気が見つかることもありますが、黄疸(体が黄色くなったり、尿が濃くなる)・食欲不振・倦怠感・腹痛といった症状で受診されて、病気が発見されることもあります。
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1.脂肪肝
肥満・過栄養・アルコールなどが原因で肝臓に脂肪が貯まる状態で、検診のエコー検査などで最も高頻度に見つかる病気です。アルコール性のものを除けば、適度の運動と食事制限などで元に戻る良性のものがほとんどですが、中には肝硬変に至る病態もあることが近年わかってきており、肝機能が悪化する場合は精密検査が必要です。
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2.肝炎
様々なウイルスや、アルコール・薬物・自己免疫などが原因になって、肝障害が生じます。外来や短期入院で治癒するものもありますが、集中治療を要するものや難治性のものは大学病院などと連携して治療を進めていく場合もあります。慢性化した肝障害は、やがて肝硬変、肝臓癌と進行していく可能性があり、定期的な検査(採血・エコー、CTなど)が必要です。インターフェロンなどの抗ウイルス治療が適応になることもあります。
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3.肝硬変
肝疾患が進行すると、線維化(肝臓が硬くなる)が起こり、やがては肝機能が低下して、腹水・黄疸・消化管出血を引き起こすほか、肝臓癌の原因になります。これが、肝硬変といわれる状態で、進行すると不可逆的で治療は困難となりますが、初期の段階では抗ウイルス治療などで改善が望めることもあります。
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4.肝癌
原発性肝癌(多くは、B型・C型肝炎ウイルスの慢性感染が原因の肝細胞癌)と、転移性肝癌(大腸癌など)に分けられます。当院でも腫瘍の大きさ・数、肝機能に応じて、複数の治療法から適切なものを選択して行っています。
- 治療:手術(肝切除)
焼灼療法(RFA:ラジオ波)3cm以下、3個以下のものなど
血管造影を用いた肝動脈塞栓療法
全身化学療法
- 治療:手術(肝切除)
対象疾患-胆道疾患
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1.胆石症・総胆管結石症
胆嚢や総胆管に石ができる病気で、右季肋部・心窩部痛といった症状がある場合は治療の適応になります。腹腔鏡下胆嚢摘出術が治療の中心で、当院でも多くの患者さんを手がけています。病態によって開腹手術が必要になったり、年齢や全身状態によっては薬物療法にとどめることもあります。胆嚢炎や胆管炎を併発すると、発熱や黄疸、細菌性ショックなど生命を脅かすこともあり、重篤な場合は緊急の処置(手術、エコーや内視鏡による処置)が必要です。胆管結石の治療としては、手術や内視鏡を用いた採石のうち、最善のものを選択しています。
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2.胆道がん(胆嚢がん・胆管がん・十二指腸乳頭部がん)
黄疸や発熱・腹痛で発症することが多く、手術が治療の中心です。早期の胆嚢がんなど、小さな手術で治癒を見込めるものもありますが、多くは胆管や十二指腸切除・肝切除などの大きな手術を行います。大血管の合併切除が予想される場合などは、がんセンターなどとの連携も積極的に進めています。また、病気の広がりや年齢・全身状態によってはエコーや内視鏡を用いて黄疸をとる治療にとどめることもあります。
対象疾患-膵臓疾患
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1.膵炎
前屈位で軽減する心窩部痛や背部痛が特徴的で、原因としてはアルコール過飲・胆石が最も多く、特発性(原因不明)・自己免疫などの場合もあります。膵臓の自己消化(膵臓で作られる消化酵素が膵臓自身を攻撃し、さらには全身的な有害反応をきたす)という機序によって起こります。中等度以上の急性膵炎は長期の入院を要することも多く、重症化すると死亡率が高いので注意が必要です。膵臓が硬くなり、石灰化(石ができる)を生じたものは慢性膵炎といわれ、持続する痛みや消化不良・糖尿病などの膵機能低下を招きます。
アルコールによるものは禁酒、胆石によるものは手術が第一選択の治療となります。 -
2.膵腫瘍
膵がんは年々増加傾向にあり、消化器がんの中でも最も治療に難渋するがんのひとつです。進行すると黄疸・腹痛で発症しますが、早期に見つけるのが困難です。治療は手術のほか、放射線療法、化学療法を組み合わせて行いますが、胆道がん同様に、状態によってはエコーや内視鏡を用いた黄疸をとる治療などにとどめることもあります。
他に、比較的稀な膵臓の腫瘍として、嚢胞性膵腫瘍、ホルモン産生腫瘍などがあり、手術の適応になりますが、いわゆる膵がんに比べるとたちがよいのがふつうです。
対象疾患-甲状腺疾患・一般外科疾患
甲状腺は頚部の前面にある、ホルモン産生を行っている小さな臓器です。外科で診療する疾患は甲状腺に結節(しこり)を生じる病気ですので、主には自覚症状・検診などでしこりを発見された患者さんに精密検査を行い、がんとの鑑別をつけることが中心になります。
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1.良性結節
良性腫瘍の大部分を占めるのは濾胞腺腫といわれるしこりです。
また、過形成といわれ、いわゆる真の腫瘍ではないのですが、しばしば発見される腫瘤として腺腫様甲状腺腫というものがあります。腺腫は単発、腺腫様甲状腺腫は多発であることが多いという特徴があります。 -
2.甲状腺がん
多くは比較的たちがよく、増殖がゆっくりであり、切除手術を行えば予後は良好です。しかし、中には他臓器の転移をきたすものものや、高齢者に多く急速に増大する未分化癌といわれるものもあり、化学療法や放射線治療を要する場合があります。
【診断の流れ】
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1.視診・触診
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2.超音波(エコー)
頚部にゼリーを塗って、専用の超音波装置で甲状腺や周囲のリンパ節をくまなく調べます。痛みは全くありません。
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3.穿刺吸引細胞診
がんを疑う場合や質的診断が困難な場合に行います。触診下あるいはエコーを使って細い針を刺し、細胞を採取して顕微鏡で判定します。
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4.CT・MRI
他の診断法で確定診断がつかないときや、甲状腺がんと診断した場合に病巣の広がり(がんの進展・転移の有無)を判定して治療方針をたてるのに用います。
当院で診療している主な一般外科疾患
- そけいヘルニア
入院手術治療を施行します
皮下腫瘤
熱傷
などです。
がんの診断
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1.がんの診断とは?
がんに特有な症状はありません。そこで、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がんなど、頻度の高いがんの早期発見のために、定期健診や、人間ドック(当院ヘルスケアセンター)を受けることをお勧めしています。
一方、胸のしこりや、腹部の症状を訴えて来院される患者さまには、症状に合わせて、以下の検査を適宜組みあわせて受けていただき、がんの診断を行っています。 -
2.診断の目的(何のためにやるの?)
がんの診断はその目的から、大きく3つに分けています。
(1)がんであることを診断する。
(2)治療方針を決めるために診断する。
(3)治療効果や、再発していないかを診断する。
ですから、同じ検査を繰り返し行うこともあるわけです。 -
3.診断の方法(どんな検査があるの?)
(1)画像診断: レントゲン、内視鏡、エコー、CT、MRIなど
(2)病理診断: 組織や細胞を病変部から採取して行う組織診、細胞診
(3)血液検査: 採血で腫瘍マーカーなどを検査
がんの治療
もし、皆さまががんと診断されたとしたら、とても暗い気持ちになられることと思われます。
がんと知らされて--
がんが進んでいるのではないか? 治療はどのようなものがあるのか? 痛いのではないか? 苦しいのではないか? 命に係わるのではないか?…と思い悩まれることと思います。しかし、正しい知識を持って、治療に臨んでいただければ、がんは決して乗り越えられない病気ではありません。
そこで、少しでも、皆様の気持ちを整理していただき、治療に積極的に取り組んでいただけるように当院で、実際に行われている治療方法を紹介し、お役に立てていただきたいと思います。
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(1)手術
がんを全て切り取ってしまえば、一番確実な治療となります。これを根治手術あるいは治癒切除と呼んでいます。近年、体に負担の少ない腹腔鏡下手術や内視鏡手術も行われています。
一方、がんが拡がっていて、手術で全てをとりきれない場合でも、出血や狭窄があれば、大部分を切り取って、あとは、薬物などで治療します。これを非治癒切除と呼んでいます。この場合、放射線療法、薬物療法などを加えた集学的治療を行って延命を図ることが必要です。
また、がんは取らないでバイパスを作ったりして、食事が出来るようにする手術を姑息手術と呼びます。 -
(2)放射線療法
放射線が有効であるがんでは山王病院(稲毛区)などにご紹介しています。
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(3)薬物療法
化学療法(抗がん剤治療):がんを殺したり、増殖を抑えたりする薬剤を使います。
免疫療法:がんに対する免疫力を高める治療です。注射や飲み薬があります。
ホルモン療法:乳がんなどホルモン感受性のある(ホルモンで大きくなる)がんにおこないます。 -
(4)緩和医療
がんの痛みや、吐き気などの肉体的、あるいは精神的症状を和らげる目的の治療あるいは看護を提供致します。
化学療法
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【胃がん】
1)ティーエスワンを2週間投与し1週間休薬
2)ティーエスワンにシスプラチンを併用する
3)パクリタキセルにサイラムザを併用する
4)ティーエスワンにドセタキセルを併用する
5)カペシタビンの投与またはオキサリプラチンとの併用 -
【大腸がん】
1)アイソボリン + 5FU (点滴)を週1回6週間投与、2週休薬
2)UFT(E) + ロイコボリン(経口)を4週投与、1週休薬
3)FORFIRI:イリノテカン + アイソボリン + 5FUを48時間かけて投与
4)FORFOX:オキサリプラチン + アイソボリン + 5FUを48時間かけて投与
5)ティーエスワンの投与
6)カペシタビンの投与またはオキサリプラチンとの併用 7)3)~6)に分子標的薬(ベバシズマブ、ベクティビックス)の併用 -
【膵がん】
ジェムザール(点滴)を週1回 3週投与1週休薬
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【転移性肝がん】
肝動脈にカテーテルを留置し、抗癌剤を注入する治療法(動注)を行っています。
動注週1回 を毎週5FU 単独または5FU + シスプラチンを5時間で注入 -
【乳がん】
1)CEF(28日毎6サイクル)
エンドキサン + ファルモルビシン+ 5FU (点滴)
2)CMF(28日毎6サイクル)
エンドキサン + メソトレキセート + 5FU (点滴)
3)EC(21日毎4~6サイクル)
エンドキサン + ファルモルビシン (点滴)
4)ハーセプチン+タキソール(点滴:毎週投与・タキソールは3週投与1週休薬)
5)タキソール単独(点滴:3週投与1週休薬)
6)ゼローダの経口投与
6)フルツロンの経口投与
7)ホルモン療法剤
ノルバデックス、アフェマ、フェアストン、アリミデックス
アロマシン、フェマーラ、リュープリン、ヒスロンH など
がんの免疫療法
もともと人間の体は、がんの発生を防いだり、発育を抑制する働きを持っているとされています。その主役は免疫系と呼ばれるリンパ組織です。免疫系は体内に入ってきた細菌やウイルスなどを退治しますが、体の中にできたがんも排除しようとする働きがあるわけです。実際にリンパ球の一種のキラー細胞やNK細胞ががん細胞を退治することが確かめられています。
近年では種々の「免疫チェックポイント阻害剤」が保険適応となっており、当院でも施行しています。
いろいろな方法で免疫力を高めてがんを退治しようとする治療をがんの免疫療法と呼んでいます。免疫療法は一つでなく、いくつかの方法が提唱されています。
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1.免疫チェックポイント阻害剤
元々T細胞はがん細胞を攻撃・排除する働きがあります。しかしがん細胞は免疫系から逃避し
生き延びるために免疫チェックポイント分子による免疫抑制機能を活用しています。
免疫チェックポイント阻害剤は免疫抑制シグナルの伝達を阻害することでT細胞の活性化抑制を
解除します。オプシーボなどが保険診療で認められています。 論文などで効果が報告されており、安全性も確認されています。 -
2.全般的に免疫力を高めるクスリ:免疫賦活剤
クレスチン、レンチナン、ピシバニール、(丸山ワクチン)など保健診療で認められています。
当院でも適宜使用しています。
論文などで効果が報告されており、安全性も確認されています。 -
3.全般的に免疫力を高めるといわれている食品:健康食品
アガリクス、プロポリス、メシマコブなど
効果について科学的な証明がなされていないものが多く、高価です。 -
4.がんに対する抗体を投与する治療
ハーセプチンなど
ハーセプチンは乳がん、一部の胃がんに効果があります。当院でも保険診療で使用しています。 -
5.自己のリンパ球を培養して投与する治療
LAK療法、活性化リンパ球療法など
高度先進医療の一環です。効果の報告はありますが、まだ、実験段階であり、また、自由診療で高価です。当院では行っていません。
がんの緩和医療
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1.疼痛緩和
終末期の3分の2以上で痛みが主症状になると言われ、生活の質を大きく損ねることになるので、十分な痛みのコントロールが必要です。WHO方式がん疼痛治療法が世界標準として行われており、当院でもこの方法を基に治療をしています。非オピオイド鎮痛薬(ボルタレン、ロキソニンなどの日常使われる痛み止め)から開始し、痛みの程度によってオピオイド鎮痛薬(麻薬性鎮痛剤)を加えて調節していきます。多くの痛みはこれで和らげられることが多いのですが、これらの効き難い痛みの場合は鎮痛補助薬(抗けいれん薬・抗うつ薬など)を使用したり、当院の麻酔科医や放射線照射施設と連携して治療にあたることも積極的に行なっています。
オピオイド(麻薬)は正しく使えば安全で、苦痛を最小限にしうる素晴らしい薬です。当院でも次のようなオピオイドを採用して使い分けています。
・モルヒネ(即効性の経口薬・座薬、注射)
・コデイン(強力な咳止め)
・オキシコンチン
(モルヒネの経口薬に代わって急速に広まった副作用の少ない持続性の薬です)
・デュロテップパッチ
(湿布のように貼って経皮的に吸収されるため、薬の飲めない方の鎮痛に非常に有効です)
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2.その他の身体症状の緩和
病気の広がりによって、食欲不振、便秘、吐き気、腹部膨満、呼吸困難等々さまざまな症状が出ることがあります。悪液質(がんによる全身の体力低下)が起こってくるとこれらの症状を必ずしも100%とることができないことも多いのですが、薬を使ったり、胸水や腹水を排液したりなど、できる限り手を尽くして苦しさを取り除くようにしています。ときには、腸管のバイパス手術等を行なうことで食事がとれるようになり、QOLが著しく改善することもあり、これは外科医が緩和医療にたずさわっている施設のメリットといえます。必ずしも延命治療を何もしないのがターミナル・ケアではなく、手術や化学療法の適応も含めて検討し、患者さまが快適な時間であればできるだけ多く過ごせるように援助していくのが大切なことと考えています。
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3.精神的ケア・社会的援助
終末期には抑うつ・不安といった感情が起こることが多く、器質的・精神的要因によりせん妄状態(意識障害や人格変化)に陥ることもあります。当院外科は急性期病棟ではありますが、できるだけ時間を割いて患者さまや御家族と接する機会を持つように努めています。入眠剤・抗うつ剤など適切な薬物療法で改善をはかることもあります。
また、自宅での療養を希望する方には、在宅中心静脈栄養や訪問看護との連携など、最大限のバックアップをするようにしています。自宅療養の患者さまが具合が悪いときに、いつでも入院できる体制を整えていることも、当院外科の大きな特長であると思います。